9. ジョン万次郞をテーマとしたクラレンドン小学校の学芸会 by 橋本由佳

(草の根通信66号、2011年2月掲載)

橋本由佳:クラレンドン小学校日本語部 日本語プログラムコーディネーター

クラレンドン小学校・橋本由佳先生
クラレンドン小学校・橋本由佳先生

クラレンドン小学校日本語部は、米国サンフランシスコ市の公立の学校でありながら、日本語・日本文化の学習に取り組んでいるユニークな学校です。生徒達は日々の学習の中で、基礎的な日本語を学び、学校行事を通じて日本文化への理解を深めます。中でも、毎年恒例の学芸会は最大のイベントです。2010年の学芸会は咸臨丸の来航150周年記念ということから、「ジョン万次郞の生涯と業績」をテーマにしようということになりました。

 

1年生たち。はっぴを着た子ども達とカウボーイに扮した子どもたちが寄り添っています
1年生たち。はっぴを着た子ども達とカウボーイに扮した子どもたちが寄り添っています

小学校でこのような歴史的なテーマを表現できるのか、不安もありましたが、ジョン万次郞に関しては、前年の学芸会で、あるクラスがジョン万次郞の劇に取組み(草の根通信63号ご参照)、サンフランシスコでの第20回草の根交流サミットでも上演させて頂いたこともあって、クラレンドンの皆にとっては特別な思い入れがあります。

 

全校一丸となって準備に励み、12月半ばに学芸会を迎えました。まずは幼稚園部の5歳児達が日米の友情を歌で表現しました。三味線の伴奏でのソーラン節、続いてアメリカの西武の歌。最期にはっぴを着た子どもたちとカウボーイハットをかぶった子どもたちが寄り添って「世界中のこどもたちが笑ったら」という歌を日・英で歌いました。1年生の演目は、万次郞の海の旅を象徴する「うみ」、そして小さな行為でも世界を変えることができるという内容の歌で、手話を交えながら、やはり日英で歌いました。幕間に歴史博士に扮した5年生の生徒が「ジョン万次郞という一人の人間が歴史に大きく貢献したのです」と解説を加えました。

 

2年生は、ビートルズの「イン・マイ・ライフ」の替え歌を。「私はジョン万次郞です。日本で生まれました。14歳でアメリカへ~」。観客は大爆笑でした。この子達は続いて、ハワイ時代の万次郞にちなんだダンスを南国風のうちわを両手に踊りました。3年生は日本でおなじみアルゴリズム体操、改め「ジョン万次郞体操」を、もう一つの3年生クラスは、漁師時代の万次郞にちなんだ民族調の漁師のダンスを披露しました。

昨年万次郞の劇に取り組んだ田中先生の4年生クラスは、今年はゴールドラッシュ時代の万次郞に焦点をあてました。「スーパー万次郞’49」というゲームに入り込んでしまった子どもたちが、万次郞と行動を共にし、最期に万次郞は日本へ、子どもたちは元の世界に戻るという奇想天外な劇です。歴史博士が万次郞は実際にゴールドラッシュでわずか70日間で600ドルのお金を手にし、それをもとに帰国を果たしたという解説を入れます。

5年生は、日米修好条約締結に貢献した万次郞の様子を、スターウォーズのパロディー劇にして会場を沸かせ、4/5年生合併のクラスは万次郞の数々の業績を寸劇と歌でまとめてフィナーレとしました。セリフは全て生徒達によるものです。

学芸会会場には保護者の他に、サンフランシスコ総領事ご夫妻及びサンフランシスコ市の教育委員会の方々をはじめとしたご来賓の皆様を数多くお迎えしましたが、おかげさまで大変な好評を博すことが出来ました。日系の子どももいるとはいえ、生徒数283人の大半は入学してから日本語・日本文化に初めて触れた子どもたちであり、難しい歴史用語も混ざった歌や劇を日本語・英語で表現するのは容易なことではありませんでした。しかし、日米の架け橋になりたいという思い、そして日米の友好関係の礎づくりに貢献してくれたジョン万次郞に対して感謝の気持ちが教師・生徒達の間に強くあったことが、学芸会の成功につながったと思います。